新たな可能性と地平線:APJ(アジア太平洋日本地域)の今後10年の展望

当資料は、デル・ テクノロジーズ アジア太平洋日本地域担当 プレジデント兼グローバル・デジタルシティ統括責任者のアミット・ミダ(Amit Midha)が執筆したブログの翻訳版です。

2020年8月5日

デル・テクノロジーズ株式会社

新たな可能性と地平線:APJ(アジア太平洋日本地域)の今後10年の展望

APJのビジネスで、今後変革が進んでいく3つの要素~

 

ビジネスにおいて「新たな可能性の追求」は、誰にとっても永遠のテーマです。企業は今日に至るまで、チャンスを活かし、新たな商機を創出し、新分野を開拓し、既存分野における新たな可能性を開拓し、様々な可能性を追求してきました。しかし、今後のアジア太平洋日本地域(APJ)において新たな可能性を追求するためには、新たな地平線や文脈に目を向ける必要があります。今ではかつてないペースで新しい業界やセクターが生まれては再定義され、淘汰されており、ビジネスの成功の定義も従来とは変わってきています。そのため、今日の企業が追求する可能性は、10年前のそれとは本質的に大きく異なるものとなっています。

こうした変化の原動力となっているのが、テクノロジーです。テクノロジーは、世界をより良い方向に変えていくとてつもない力を秘めています。直近10年を振り返ってみても、医療分野やゲノム研究、農業分野における技術革新はめざましく、世界全体での食糧調達のあり方も大きく変わりつつあります。また、働き方や働くことの意味も変わってきており、働くということ、そして組織に所属するということに対する人々の意識にも変化が見られます。テクノロジーの持つ力を活かすことができれば、新たな地平線を切り開き、新たな可能性を創出することが可能になります。これにより今後、APJのビジネスにおいて以下の3つの分野で変革が進んでいくものと思われます。

  1. テクノロジーを征する者が世界を征する

APJは、長年イノベーションの発信地として新たなビジネスモデルを次々と生み出し、テクノロジーの導入に対しても積極的でした。世界の人口の60%が集中するこの地域ですが、同地域の人口は、2055年には53億人にまで膨れ上がると予想されています。そのため、最先端のテクノロジー領域において変革を起こし、リーダーとしての地位を獲得する可能性は非常に高いといえます。マレーシア、タイ、シンガポール、フィリピンのインターネット市場は年率20~30%の高成長を見せており、インドネシアとベトナムの成長率はそれをさらに上回る40%となっています。[1]

APJがテクノロジー面で他の地域に先行している分野を見てみましょう。まずは通信のあり方を一変させると期待される5Gですが、韓国が世界に先駆けて初の5G商用化に成功しており、年内にはシンガポールも商用サービスを開始する見込みです。デル・テクノロジーズは、シンガポールが推進する「AIシンガポール」プログラムに参画しており、AIの利用拡大に向けた研究に資金面も含めて協力しています。研究の成果としてAIの新たなテストケースや活用方法が見いだされており、世界におけるAIの導入に弾みがつくものと思われます。こういった取組みが評価され、最近シンガポールはシドニーと並んで「AIによるディスラプション(破壊的イノベーション)の最有力候補10都市」に選出されています。

APJは長年、最先端のテクノロジーを活用したイノベーションを得意としてきました。自動運転の分野でも、2016年にマレーシアの研究開発企業のREKA社が、運転手なしの自動運転車の後部座席に乗客2名を乗せ、クアラルンプールからマラッカまでの走行を成功させるという快挙を達成しています。また、シンガポールでもつい最近、スマートテクノロジーの普及に向けた取組みの一環として、初のドローンによる小包配送実験の成功が報じられました。こうした流れは、今後も続いていくことでしょう。

テクノロジーの実装においても、APJは他の地域よりも先行しています。ASEAN加盟国(AMS)10カ国が共同で設立したASEANスマートシティ・ネットワークは、「スマートで持続可能な都市開発」という共通の目標実現に向けた都市間の協力促進のためのプラットフォームで、前向きな変化を起こすためにテクノロジーを積極的に取り入れていこうというこの地域の特質がよく表れています。スマートシティーやデジタルシティー関連の世界ランキングでもAPJの諸都市が毎回上位にランクインしており、APJにおける取組みや実績から学ぼうとする動きが世界的に活発になっています。

また、イノベーションを経営の根幹に据える企業が多いことも、この地域の特徴です。IFTF(未来研究所:Institute for the Future)および20名を超える世界のテクノロジー分野、学術分野、事業分野のエキスパートが主導した調査レポート「The Next Era of Human-Machine Partnerships(人とマシンの協調関係が切り拓く人類の未来)」では、APJの経営者の8割が「組織の変革を推し進めるために最先端のテクノロジーを積極的に活用したい」と回答しています。イノベーションを育む風土が根付いていることは、この地に「ユニコーン企業」や「デカコーン企業」を含むスタートアップ企業が次々と誕生し、急成長していることからも明らかです。インドネシア一国を例にとってみても、Eコマース企業のZilingoやオンライン配車のGojek等、テクノロジー系スタートアップ企業が急成長を見せています。

APJが誇るイノベーション、そしてそれを支える強力なエコシステムこそが、今後10年にわたって世界を牽引し、ビジネスにおける新たな境地を切り拓いていくことでしょう。

  1. イノベーションと持続可能性との両立

APJには、依然として劣悪な環境や貧困の深刻な地域も多く存在しますが、こうした状況の改善に向けた取組みも活発化してきています。

APJの傾向として、政府や企業、市民の間で「持続可能なイノベーション」に対する意識の高まりが見られます。タイやインドネシアといった国では、政府が使い捨てプラスチックの使用禁止に踏み切りました。市民間の対話を促進し、意識の底上げを図る上で、政府の果たす役割は大変大きいといえます。また、企業にも踏み込んだ対応が求められてきます。デル・テクノロジーズをはじめとする多くの企業も、資源のリサイクルや循環型経済実現に向けた大胆な目標を掲げています。

今日では、社会的責任の遂行は、企業が事業活動を行う上で不可欠であり、お客様からも取引先からも当然のように求められる要素となっています。単に社会的責任に取り組めばよいのではなく、しっかりと成果を出すことが重要です。今後は、企業側の説明責任が増し、消費者と企業側双方の意識が高まるにつれ、APJでもビジネスのあらゆる側面に社会的責任の考え方を取り入れる企業が増えていくことでしょう。

APJは、その地域的優位性を活かし、この分野で貢献できる大きな可能性を秘めているのです。その経済規模、高度なテクノロジー、そしてイノベーションをもってすれば、新たな目標に到達し、新たな地平を切り拓ける可能性は多いにあるでしょう。

  1. 次世代の人材が切り拓く新たな地平線

今この地で起こりつつある多くの変化の要となるのが、若者世代です。まもなく労働人口に加わり消費購買力を増す彼らは、今まで以上に重要な存在となります。私自身も、仕事でもプライベートでもZ世代と呼ばれる若者世代の動向に大いに注目しています。仕事や人生に対して従来とは異なる価値観を持ち、APJの未来、イノベーション、ビジネスを担っていく存在としてZ世代は注目に値します。彼らこそが、次世代のリーダーとして企業や社会の未来を創っていくのです。

Z世代の若者の特徴として明らかになっているのが、社会や環境に対する責任を果たしているかどうかという基準で就職先を選ぶという点です。また、この世代はテクノロジーを駆使して他者や環境にとってプラスになるような仕事をしたいという意向を持っていますが、この傾向は世界でもAPJが最も顕著です。政府はこの世代がもたらす新たな行政ニーズに目を向ける必要があり、企業側もこの世代の人々が会社に何を期待しているかを認識する必要があります。これからの10年はZ世代が主役に躍り出てて、「自分のためではなく人のために働く」という意識がさらに高まっていくことでしょう。

APJという地域の持つ力と可能性、イノベーションを育む土壌、持続可能性への取組みの強化、まもなく労働人口に加わるZ世代の影響力といった様々な要素が相まって、これからの10年は「新たな地平線開拓の10年」となるでしょう。まだ現時点ではこの新たな地平の全貌を望むことはできないかもしれません。しかし、企業がテクノロジーを駆使して時代に即した存在へと進化できれば、未来がもたらす新たな可能性を手に入れることができるはずです。

執筆者:

デル・テクノロジーズ

アジア太平洋日本地域担当

プレジデント 兼 グローバル・デジタルシティ統括責任者

アミット・ミダ(Amit Midha)

[1] Southeast Asia’s internet economy to hit $300 billion by 2025: report

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